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リレーコラム

「生涯スポーツ」全ての人に-パラリンピック契機に幅広い関心を-

数々のドラマを生んだロンドンオリンピックが終わり、いよいよ8月29日より第14回夏季大会ロンドン2012パラリンピック競技大会の十二日間の競技が開始される。

野村一路先生

シンポジウム時の野村先生

 

165の国と地域から選手4,200名、役員2,000名が参加予定であり、日本選手団も選手135名、役員121名が参加を予定している。近代オリンピックの発祥の地がギリシャのアテネであるように、現在のパラリンピックの原型となる大会はイギリスのストーク・マンデビル病院の脊髄損傷科初代科長のグッドマン博士によって始められた国際ストーク・マンデビル大会であり、今大会はその発祥の地に戻ってきた大会である。

 

さて、昨年制定されたスポーツ基本法第二条の基本理念に「障害者が自主的かつ積極的にスポーツを行うことができるよう、障害の種類及び程度に応じ必要な配慮をしつつ推進されなければならない」と障がいのある人のスポーツ振興に関して明記され、この基本理念の実現に向けた取り組みがされなければならない。何らかの障がいのある人の数は増加傾向にあり、特に障がいの有る人にとっては日常生活における身体活動や運動の機会は重要であり、スポーツ参加の機会を増やすなど、同法の前文で掲げられている「スポーツ通じて幸福で豊かな生活を営むことは全ての人にとっての権利」の保障に私たちは努めなければならない。

 

そこで文科省は今年度の新規事業として、障がいの有る無しに関わらず共にスポーツ・レクリエーション活動を楽しみ、共生社会実現に向けての取り組みを始めた。今年度は公益財団法人日本レクリエーション協会が委託を受けてこの事業を実施し筆者もその協力者会議の一員として携わっている。全国一五地域においてモデル事業を実施することになっており、県レク協会に事務局を置き、社会福祉協議会やスポーツ団体、障害者スポーツ協会や障害者スポーツセンター、特別支援学校や社会教育関係団体等との協働により様々な事業が展開される。九月二一日には福井県において、「スポーツ・レクリエーションの新たな可能性~障がいのある人もない人も、共に生きる社会へのアプローチ~」と題してシンポジウムも開催する。この事業は、障害者基本法の第二五条にもあるように「障害者が円滑にスポーツ又はレクリエーションを行うことができるようにするため諸条件の整備、スポーツ等に関する活動の助成その他必要な施策を講じる」という内容も踏まえつつ、同法が目指す障がいの有る無しに関わらない共生社会実現に向けた取り組みともいえる。

 

オリンピック・パラリンピックに見られるアスリートのパフォーマンスは、人間としての限界に挑む素晴らしさが多くの人々に勇気や感動を与え、広くの国民の支援が必要であるが、しかし一方ですべての国民の日々の暮らしの豊かさと楽しみを与えてくれる私たち自身のスポーツ・レクリエーション活動の重要性はさらに大切である。障がいの有る人のスポーツ振興は益々図られなければならないが、地域にあっては老若男女、障がいの有る無しに関わらず様々な人々が共に生活をしているのであり、この地域における日常的なスポーツ・レクリエーション活動の普及・発展こそ直接的な生活の豊かさを生みだすものであることを強調したい。スポーツの本質は「楽しさ」であり、生涯にわたって生活の楽しさを生みだす「生涯スポーツ」の振興は障がいの有る無しで決して違いがあってはならないことが広く共有されることを望みたい。

野村一路(日本体育大学教授)

2012年8月16日 毎日新聞 これが言いたいより転載

野村 一路

カテゴリー: リレーコラム, 野村 一路

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